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…すごいモノを見つけてしまった。 ダンスの帰り道、雨宿りに立ち寄った骨董屋で、私は古びた靴を穴があくほど見つめていた。 煤けて見栄えも良くないが、これは確かに伝説の赤い靴だ。 ――あの、世界の舞台で少女が華麗に舞ったという―― 私には将来、ダンサーになるという夢がある。 日々のレッスンに精進しているのだが、今は今度の公演舞台において、ある女と主役の座を取り合っていた。 「こ、これって…有名な伝説の赤い靴ですよね?」 私は店番をしていたお爺さんに、興奮冷めやらぬ様子で聞く。 老人はあっけらかんとしていたが、すぐににっこりすると「呪いの事もお忘れなく」 と、パイプをくゆらしながら付け足すように言った。 そうだ。この伝説には続きがあった。 ――世界の舞台で踊ることに成功をおさめた少女は、そのまま死ぬまで踊りを踊り続けたそうな―― しかし、今の私には自分を犠牲にしてでも、次の公演舞台を踊らなければならない理由があった。 次の舞台には、私の崇拝する『舞の女神』、セピアが公演を見に来るのだ。 私をダンスに導いた人でもある。 だから今はまず、主役審査をパスしなければならない。 もし、その時に呪いが発動したなら私は、公演舞台まで踊り続けてみせる。 そういう事をお爺さん相手に力説しているとお爺さんも感心したらしく、この赤い靴をタダで譲ってくれるといった。 しかし、釘をさすのを忘れなかった。 「いくら赤い靴だからといって強い思いがあればこそ、素晴らしい踊りを踊ることができるんだ。 そして、その代償は大きい。 分かってるね、決して怠けず頑張ること。 そしたら…もしかしたら呪いはとけるかもしれん。」
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