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春の陽気麗らかな4月のある日。
「ただいまぁ」
家の前にどんと止めてあった迷惑な黒いベンツを見なかったことに決め込んで、玄関で声をあげる。
「ちょっ。
姉貴、空気読めなすぎっ」
誰よりも早く、中学三年生の弟、コウスケが走り出てきて私の袖を引っ張った。
「何よ?」
怪訝そうな顔をする私に、肩を竦める。
「しらねーよ。
でもさ」
声を潜めて、その視線をリビングへと向ける。
「姉貴に、客……なんだって。
今、おやじたちが話してる」
「え?
お父さん、今日、仕事じゃなかったっけ?」
「わざわざお袋が呼び戻したんだよっ」
「えぇ、何、それ?」
首を捻る私は、まだそのときどんな客が来ているのか、なんて何も知らなかったのだ。
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