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「いいや、分かってないね。
マーサが俺に泣いて頼んだから待っていてあげたのに」
艶やかな声が紡ぎだす言葉の、信憑度が計り知れなくて首を傾ける。
「キスするまで、放してあげない」
ふと思い出したのか、響哉さんは白石の台詞をなぞるように言うと、長い指を顎にかけた。
ゆっくりと、唇が近づいてくる。
……やっ。
思わず肩を竦めてしまう。
まるで、金縛りにでもあったかのように身動きが取れない。
思わずぎゅっと瞳を閉じた。
チュっと。
軽い音を立てて彼の唇がぶつかったのは、私の唇ではなく額だった。
「……?」
瞳を開ける。
わしゃわしゃと、手荒く、響哉さんが私の髪をかきまわす。
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