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私は響哉さんに誘われるがままに夕食作りの手伝いをする。
その間中、彼の名前を呼ばないように気を遣わなきゃいけなくて。
正直、少し神経が磨り減る。
ようやく夕食をテーブルに並べてほっとしたのか、つい、口が滑った。
「ねぇ、響哉……っ」
響哉さんって、ドレッシングはどれを使うの? って聞こうと思い、思わず名前を口にしてしまった私は、曖昧に唇を閉じる。
別の皿をテーブルに置いた響哉さんは、その手で私の頭をぽんと叩く。
「いいよ。呼びやすいように呼んでくれれば」
優しさを溜め込んだ声の向こうに、淋しそうな表情が透けて見えたので、私は思わず唇を噛む。
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