3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ち、遅刻だー」
田中家の朝はこの声から始まる。
その声の主は、田中家次男坊『哲雄』である。
「かーちゃん、なんで起こしてくれないんだよー!!」
「何回も起こしたわよ、馬鹿息子。毎朝毎朝、あんたもう中学生なのだからいい加減、自分で起きなさいよね」
「わかってるよ。それより、朝飯は?」
「本当にわかってるのかねー。テーブルの上のパンがそうだよ」
呆れた声の母。
そんな事はお構いましと、哲雄はトーストとバターを手にした。
「とりあえず、座ったら?そんな落ち着きないと、落とすわよ」
そんな哲雄を見ながら母と同じように呆れたような声を出す姉。
「そんなヘマしないよ。ふん、ふん、ふん」
哲雄は鼻歌混じりにトーストにバターをつける。
そして――
「完成ー。ばたーとーすとー」
「哲雄!!座りなさい!!」
「うわっ」
落ち着きのない哲雄を怒る母。
驚く哲雄。
そして、哲雄の手からこぼれるバタートースト。
バタートーストはまるでスローモーションの様に回転しながら、床へと向かっていく。
手を伸ばす哲雄。
無常にも落ちていくバタートースト。
そして――バタートーストは床とキスをした。
バターのついた面が……
最初のコメントを投稿しよう!