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第2章
「ぇ…ウソ……」
「残念ながらこれでは採用するわけにはいかない」
「でも…まず落ちることはないって…」
「だが落ちないとも言っていない」
男は申し訳なさそうに目を反らした。
目の前が真っ白になって思考が働かず、自分が膝をついて座りこんでしまったことにも気が付かない。
うつ向く紅葉に男はかける言葉が見付からず、ただその様子を見つめているだけだった。
けれども仕事は全うしなければならないため、目をつむって声をしぼりだした。
「後ろの扉から外へ出られる。裏道だから誰かに見られることはない」
言われて緩慢な動きで後ろを振り向き、のそりと歩きだした。
頭がぼーっとしてきちんと挨拶をしてからでたのかも覚えていない。気付いた時には既に人気のない道をくだっているところだった。
現状を把握すると、後から後から涙が溢れでてきた。
結局人生なんてかわらない。
特別なひとは特別で、私は決して特別にはなれない。
努力して特別になれるひともいるが、こんな奇跡で手に入れた機会を不意にした私にはその一部になれる技能はない。
この先もずっと人並みで。
波風たたぬ生き方をするのが一番なのだ。
そうすればこんなに悲しいことにも遭わないし、ひとからの目が変わることもないんだから。
やっぱりこれは私の選択間違いだったんだ。
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