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けたたましい爆音が響く。
直後、錆びた鉄を無理矢理動かしたような、軋んだ駆動音。
件の、アインストとかいうバケモノ達だろうか。
人々の悲鳴は、そのあまりに巨大すぎる者達に蹂躙され、断末魔すら掻き消されていくだけだ。
そこに関しては、もはや何の感慨も湧かない。
こうして、少しは安全だろうと思われる国立EOT研究機関にまで逃げてくる際、人の死は飽きる程見てきた。
原型を残さないほどバラバラになった人間、失敗した焼き魚の様に黒焦げになった死体の群れを前に、人は二種類のタイプに別れる。
一つは、完全に心を壊し、発狂してしまう者。
もう一つは、生命のはかなさを実感し、自分の生命すら突き放して見るようになる者。
オレは、後者の方だった。
ここまで無惨な死体達を見続け、感覚が麻痺してしまったらしい。
そんなことより、必死で走り続けたため、渇ききった喉が張りつく不快感の方が、余程重要な問題であった。
「生きてるか!?ヴァーシュ?」
笑う膝をなんとか曲げてその場にへたりこむと、オレは隣にいるもう一人に声をかけた。
ヴァーシュ・ブロウニング。
オレの親友だ。
「なんとかね…シンヤこそ、大丈夫?」
アメリカ人の血を引き、短く揃えたブロンドが汗で張りつくのか、不快そうに前髪を掻き上げながら答えた。
どうやら、五体満足のようだ。
「オレの悪運は知ってんだろ?このシンヤ・ナンブを殺すには、あのバケモノ達じゃあ物足りないって!」
そう言って、オレ達は笑い合う。
生命の危機が迫っている、こんな状況にも関わらずだ。
「でもさ…ホントにもうやばいよ、コレは。今度こそ、終わりかもね。」
ヴァーシュは、その生い立ちからか、己も含め人間だとか、生命だとかに興味が薄い。
よく言う、「人間嫌い」以前の問題を、こいつは抱えているのだ。
「そいつは生憎だったな。オレとつるんでて、お前にも悪運がうつっちまったみたいだぜ?」
すぐ横にあったコンピュータを指差すと、たちまちヴァーシュの顔色が変わる。
研究員達は余程慌てて逃げたのか、電源は入ったままだった。
そのディスプレイに映るおびただしいデータ。
それは…
「パーソナル…トルーパー!?」
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