終わる日々、崩れゆく世界

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「総員、起床!!」 やけに気合いの入った、この怒鳴り声と共に、護衛艦「こんごう」の一日は始まる。下士官たちは一斉に自分のベッドから出てきて、身支度を整えて自分の持ち場につく。いつもの風景だ。 「六ヶ国協議、また不発だったみたいだな。」 下士官のひとりが仲間の下士官にぼやく。 「だろうな…ほんと、どうにかならないものかねぇ。」 そうして雑談を続けようと下士官が口を開いたとき、 「こら、なにをしている!持ち場に戻れ!」 と、上官の声がとんできた。二人の下士官は、慌てて敬礼すると自分の配置に戻っていった。 「こんごう」は訓練海域に向かって、全速力をもって航行していた。その訓練海域とは、東京を少し離れた沖だった。…海は穏やかで、「こんごう」のレーダーには、なにも映ってはいなかった。 「…暇だなぁ、こう馬鹿みたいに静かだと、逆に何か起こって欲しいくらいだ。」 レーダーとにらめっこをしていた参謀長が呟いた。 「何かあったらそれこそ大変だぞ?静かでいいじゃないか。」 と、副艦長。 「…それもそうですね。」 参謀長は、再び視線をレーダーに落とした。
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