STAY AWAY

4/5
前へ
/5ページ
次へ
  帰ろうとした。その気でいた。 が、スタジオのあの むあっとした 空気に浸かるのかと思うと… 辞めた。まだ帰りたくはない。 ふと、水を大胆に弾く音が聞こえ、 立ち止まって、見る。 行き交う人間が突然の雨に 小走りしたり、頭に鞄をかざして 歩いていたりと… なんだか、滑稽だ。 それが人間なんかなあ… そうか。 俺は一人納得して泣きじゃくる 灰色の空を見上げる。 どうしてもビルが遮るが もう、それは放っておく。 なぜなら、それさえもこの空の 一部にしかすぎない風景なんだと 思えたから…。 思い込みはいつしか偽りさえも 真実に塗り替えることが出来る。 ……そうか、 じゃあだとすれば、 同化出来ていない 俺は 「 そんなに 俺が 可哀相か? 」 空に向けた筈の疑問は重力に負け、 俺の中に落ちて来てしまって 存外、痛くて仕方ないから 俺も小走りに帰ることにした。 //end ⇒アトガキと云う名の遠吠え。  
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加