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帰ろうとした。その気でいた。
が、スタジオのあの むあっとした
空気に浸かるのかと思うと…
辞めた。まだ帰りたくはない。
ふと、水を大胆に弾く音が聞こえ、
立ち止まって、見る。
行き交う人間が突然の雨に
小走りしたり、頭に鞄をかざして
歩いていたりと…
なんだか、滑稽だ。
それが人間なんかなあ… そうか。
俺は一人納得して泣きじゃくる
灰色の空を見上げる。
どうしてもビルが遮るが
もう、それは放っておく。
なぜなら、それさえもこの空の
一部にしかすぎない風景なんだと
思えたから…。
思い込みはいつしか偽りさえも
真実に塗り替えることが出来る。
……そうか、 じゃあだとすれば、
同化出来ていない 俺は
「 そんなに 俺が 可哀相か? 」
空に向けた筈の疑問は重力に負け、
俺の中に落ちて来てしまって
存外、痛くて仕方ないから
俺も小走りに帰ることにした。
//end
⇒アトガキと云う名の遠吠え。
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