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その人は20歳の大学生だった。
名前は川村 慎一さん。
優しい兄ちゃんだった。
俺と同じ病気で
発病したのは17歳の時らしい。
当時 高校生だった川村さんは バンドを組んでいて
将来プロを目指していたんだってさ。
川村さんは 右膝カラ下が義足だった。
川村
「この病気で1番多いのは膝なんだ。」
そう言って スエットのズボンをまくり上げて義足の部分を見せてくれた。
川村
「何回 入退院繰り返したかな(笑)
義足でも ギター弾くのに影響ないし 前向きだったんだけどね…
転移…しちゃった(笑)」
俺
「転移?」
川村
「ん… 初めは腰。
そして右肩にも…
手術したけど 腫瘍を取り切る事が出来なかったんだ。
ギターが弾けなくなったよ…
かなり精神的に参ったし絶望してね
自棄になってた俺に 彼女が言ったんだ。」
彼女は 早苗さんと言って 川村さんの幼なじみらしい。
中学の時 お互いの気持ちを言い合って 以後 ずっと付き合って来たそうだ。
早苗さんは 毎日 川村さんの病室に来ていた。
綺麗で優しい 笑顔の素敵な人だった。
川村
「彼女はね『右がダメなら左があるぢゃない!』って…
ギターを持って来て練習させられたよ(笑)
初めは拒否してたけど
やっぱ 弾きたくてさ
車椅子押して屋上行って練習したんだ」
そう言って 俺にギターを弾いてくれた。
俺
「上手い!」
右手が不自由になってから左手を使えるように練習していたそうだ。
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