神流ちゃんの男嫌いの訳

8/14
前へ
/52ページ
次へ
神流は息を飲んだ。 会いたくなかったのに…。 目の前には宏隆がユニフォームのままいた。 いくら裏切られたとは言え… 神流は宏隆のことを完璧に嫌いには慣れなかった。 生まれて初めて本気で好きになれた人だから。 また目に涙がたまる。 目の前の宏隆がぼやけ始める中…やっとのことで神流は声を絞り出す。 「……何の……用…?」 いつもの甘い声は枯れ…かすれた痛々しい声…虫の鳴き声のように宏隆に投げかける。 宏隆はゆっくり神流の頬に手を伸ばして言った。 「別れよっか。俺の素性知っちゃったでしょ?」 手は優しいのに…投げかける言葉は氷のように冷たく 口は笑っているのに…目は刃物のように鋭い。 神流は… ただただ震えて泣くだけ…。 「ゃ………だ…ょ。…」 ポトポト涙が宏隆の手に落ちる。 宏隆は溜め息をついて神流を抱きしめた。 神流はいきなりの行動に驚いたが…まだ付き合っていれると解釈して背中に手をまわそうとした。 プチンッ 神流の背中で音がした気がした。 すると同時に胸に違和感を感じた。 神流はいきなりのことに頭が回らない。 …ぇ?…え?
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

309人が本棚に入れています
本棚に追加