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神流は息を飲んだ。
会いたくなかったのに…。
目の前には宏隆がユニフォームのままいた。
いくら裏切られたとは言え…
神流は宏隆のことを完璧に嫌いには慣れなかった。
生まれて初めて本気で好きになれた人だから。
また目に涙がたまる。
目の前の宏隆がぼやけ始める中…やっとのことで神流は声を絞り出す。
「……何の……用…?」
いつもの甘い声は枯れ…かすれた痛々しい声…虫の鳴き声のように宏隆に投げかける。
宏隆はゆっくり神流の頬に手を伸ばして言った。
「別れよっか。俺の素性知っちゃったでしょ?」
手は優しいのに…投げかける言葉は氷のように冷たく
口は笑っているのに…目は刃物のように鋭い。
神流は…
ただただ震えて泣くだけ…。
「ゃ………だ…ょ。…」
ポトポト涙が宏隆の手に落ちる。
宏隆は溜め息をついて神流を抱きしめた。
神流はいきなりの行動に驚いたが…まだ付き合っていれると解釈して背中に手をまわそうとした。
プチンッ
神流の背中で音がした気がした。
すると同時に胸に違和感を感じた。
神流はいきなりのことに頭が回らない。
…ぇ?…え?
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