第1話 女神様

2/39
前へ
/500ページ
次へ
涼しい風が草原の草をサワサワと音を立てながら通り過ぎていく。 殺伐とした風景に、黒い点が1つ動いていた。 銀髪をなびかせたその姿は、大陸にいる種族の1つである人間族の姿をしていた。 小さな丘を登った時、“彼”の左目がわずかに見開く。 「…ここも戦場跡か」 はあ…と溜め息をつく彼の口調は落胆を隠せない。 これを合わせて三度も戦場跡に出くわしたのだ。 戦争をしているのは彼と同じ人間族と、魔海の向こうから来た魔族だ。 無惨に切り裂かれた人間族の兵士や魔物、魔族の兵士の死体が草原に所狭しと転がっている。 随分と乱戦だったらしく、遺体の損傷が激しい。 「…うゥ…」 死体の山から小さな呻き声が聞こえてきた。苦痛を押し殺したような感じを受ける。 「生き残りか。 おい、今行くからな」 彼は声のする方に駆け寄ると、魔族の死体をヒョイと放り投げる。 その下から、金髪をした若い兵士が呻き声と共に姿を現した。 「獣人族の兵士か…。酷い扱いだな」
/500ページ

最初のコメントを投稿しよう!

504人が本棚に入れています
本棚に追加