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涼しい風が草原の草をサワサワと音を立てながら通り過ぎていく。
殺伐とした風景に、黒い点が1つ動いていた。
銀髪をなびかせたその姿は、大陸にいる種族の1つである人間族の姿をしていた。
小さな丘を登った時、“彼”の左目がわずかに見開く。
「…ここも戦場跡か」
はあ…と溜め息をつく彼の口調は落胆を隠せない。
これを合わせて三度も戦場跡に出くわしたのだ。
戦争をしているのは彼と同じ人間族と、魔海の向こうから来た魔族だ。
無惨に切り裂かれた人間族の兵士や魔物、魔族の兵士の死体が草原に所狭しと転がっている。
随分と乱戦だったらしく、遺体の損傷が激しい。
「…うゥ…」
死体の山から小さな呻き声が聞こえてきた。苦痛を押し殺したような感じを受ける。
「生き残りか。
おい、今行くからな」
彼は声のする方に駆け寄ると、魔族の死体をヒョイと放り投げる。
その下から、金髪をした若い兵士が呻き声と共に姿を現した。
「獣人族の兵士か…。酷い扱いだな」
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