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獣人族は長年、人間族に奴隷としてこき使われてきた。
戦争の道具、遊女、召使い…生活もとても直視出来ないほど酷い。
「止血しないとな。…鎧を脱がさ…おい動くな」
彼が鎧を外そうとすると、獣人族の兵士はその手を払い、立ち上がろうとする。
その度に、背中の傷口から血がドロリと流れる。
「動くな…死ぬ気か?」
「触るなァ!人間なんかに、触られてたまるか!」
黄色を基調とした毛に、黒の斑点がある耳を引いてフーッと威嚇する獣人族の兵士。
姿形から、豹のような獣人だ。
人間に虐げられた獣人族の精一杯の抵抗だった。
「貴様ら人間なんかに助けられるなら、魔族に殺されたほうがマシだ……っ!?」
吠えた獣人族の頬を、彼が容赦なくひっぱたいたのだ。
「…バカ野郎…助かった命がいらないなんて言うな。獣人だろうが人間だろうが助ける」
「う…うるさい…貴様なんか」
「死ぬのは怖いだろ?」
彼の目と獣人の兵士の目が合う。
口では勇ましく言っていたが、やはり瞳には死に対する恐怖が浮かんでいた。
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