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彼は獣人族の兵士の背中に回ると、鎧の留め金を外す。
もう獣人族は抵抗せず、俯いたままだ。お尻から出ているフサフサの尻尾は地面に力無く垂れていた。
「ちょっと痛いぞ」
「~~~~っ!!?」
彼の声が掛かると同時に、背中を熱い痛みが襲った。
「は、歯を食いしばる時間もくれないのか!?
やっぱり人間はサイテーだッ。気遣いのない奴はモテないんだぞ!…ってぇ?!」
「怒鳴る元気があるんだな。良かった」
くるくると包帯を巻き、ギュッと縛る。
獣人族の戦士はちょっと唸りながら包帯を触る。
「止血も消毒もした。清潔な包帯もした。
だけど失われた血は取り戻せない。休める場所まで行くぞ」
「ヤダ……あ、引っ張んな!痛い痛い!怪我してんだぞ!?」
ぐいぐい引っ張っていく彼に、獣人族の兵士は悲鳴を上げつつ引っ張られていく。
死臭が漂う戦場跡を後にし、2人は小さな丘まで辿り着いた。
丘には大きな木が一本がポツンと立っていた。ここに来るまでにおんぶに切り替わっていたが、もぞもぞと動き出す。
「は、早く下ろせってぇ!このッ…いてぇ?!」
「下ろしたからな」
「………ガキかっつうの」
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