一章 双子

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 居間につくなり、 「今、温め直すから少し待ってて」  言い残して、台所へ消えた弟の背を見送り、シェイラはおとなしく椅子に座った。  香ばしい焼きたてパンの香りに、麻痺していた空腹感が蘇る。  ぐぅ~。  慌ててお腹を押さえたが時既に遅く、盛大な音が鳴り響いた。  台所まで聞こえたのか、シェイルの笑い声が聞こえる。 「シェイル!笑いすぎだよ!!」  恥ずかしくて顔を真っ赤にして怒鳴ると、台所からひょこっと顔を覗かせたシェイルが、 「これでも食べて待ってて」 と、こちらに 何か投げて寄越した。 「えっ?」  両手を広げてキャッチする。  見てみると、白くてふわふわしたマシュマロが手のひらに転がっていた。 「わぁっ、ありがとう!」  さっきまで真っ赤になっていた事をすっかり忘れ、シェイラは満面の笑みを浮かべた。  心からの笑顔に、シェイルも微笑む。 「どういたしまして。もう出来るから、それ食べたら運ぶの手伝って」 「うん!」  頷いてマシュマロを頬張る。  柔らかいそれは口の中で溶けて、優しい甘さを舌に残した。
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