序章 託宣

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 口にして、ようやく単語が示す意味を理解する。 「…まさかっ!」  激昂したガゼットは、産婆を押しのけて走った。  枕元まできて、怒鳴ろうとした言葉を飲み込む。  小屋へ踏み込んだとき感じた強い気の源が二人、泣いていた。  小さな頭には光輪が。  だが、背中には。 「…羽がない。やはり預言の――」 「ごめんなさい」  顔を覆っていた手を下げて。  涙で濡れた頬を拭う事もせず、シェリルは言う。 「ごめんなさい。こうなる事はわかっていたのに、自分の気持ちを、偽りたくなかったの」 「……」  もう、怒る気すら失せていた。  ただ、失望と悲しみだけが、自分を支配する。 「…相手は、ナリスか?」  かつて、共に過ごした穏やかで物静かな青年。  天使長補佐として。  また、良き友人として、自分を支えてくれた、大切な者。  けれど、彼はもういない。 『一体、何の為に私たちはここに居るのだろうね』  ナリスが、失踪する前日に呟いた最後の言葉。  その意味を、ガゼットは今も探し続けている。
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