序章 託宣

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「…ナリスは今、どこにいる」  そう問い詰めたが、返答はない。  死んでも言うものかと、固く唇を噛み締めている。  次第に、表情が険しくなるのが自分でもわかった。 「…わかった。ならば、覚悟は出来ているな」  腰に下げていた長剣をスラッと引き抜く。  天使長のみ扱える宝刀ガルバディス。  聖光のみを集めたその剣は、輪廻の輪をも切り裂く。  輪廻を絶たれた者は、転生を許されず、存在そのものが消滅する。  肉体はおろか、人々の記憶からも消え失せるのだ。 「……っ!」  青ざめたシェリルは、自由にならない体を必死に動かして、子に覆い被さった。 「お願いです。この子たちだけは、助けて下さい!」 「天界に仇なす者を、野放しにする訳にはいかない」  例え、心が痛んでも。  私情を殺して種族を守る。  それが光天使長の務め。 「ДёЫж」  唱えた途端、刀身が光を帯びる。  緊迫した空気を感じ取ったのか、より強く預言の子が泣き叫ぶ。  シェリルは、子を強く抱き締めた。  そして。 「ЭЫёЯ!」  全身全霊をかけて、最後の力を使う。  
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