序章 託宣

6/7
前へ
/27ページ
次へ
 生まれ持った力が災いを招くと言うのなら―。  封印を。 「っ!!」  眩い光が辺りを包み、全てを白に染めてゆく。  ガゼットはあまりの眩しさに目を瞑った。  しばらくして、聞こえてきた子供の泣き声に、ガゼットはゆっくりと瞼を開いた。  そして。 「シェリルっ!」  宝剣を放り投げて、ぐったりと布団に倒れ伏している愛娘に急いで駆け寄る。 「しっかりしろ!」  抱き起こすと、固く閉ざされた瞼が微かに開いた。  みるみるうちに、涙が盛り上がる。 「…おねが、い…、子供達を…」  その続きを、彼女が言うことはなかった。    完全に光を失った瞳から、涙が二滴零れ落ちる。  その瞬間、  カチ、カチンッ。    床に何かあたる音が聞こえ、ガゼットは視線を下に移した。  シェリルの直ぐ側に光る物を見つけ、拾い上げる。 「これはっ!」  天界の中でも、強い護りの力を持つ石“涙晶石”。  強く純粋な想いが込められた涙が、結晶となったもの。 「…そんなに、思っているのか?」  一族を、消滅させるかも知れない、預言の子を。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加