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人里から少し離れた、迷いの森。
名の通り、複雑な構造の森なので、人々は滅多に近寄らない。
そんな静かな森が、十五年程前から賑やかな声が響くようになった。
「シェイラ、朝ご飯が出来たよ!いい加減起きて!」
「…ん、おはようシェイル」
家と呼ぶには、余りにも小さな小屋の中。
おたまを持った少年が、今日も元気よく姉を起こす。
眠たそうに目を擦って起きたシェイラに、シェイルは大きなため息をついた。
「ほら、シャンとして。シェイラを見てると、何だか自分がぼーっとしてるみたいで嫌なんだ」
同じ顔に同じ瞳。
双子の中でも、似すぎた二人。
強いて違いを挙げるなら、ほんの僅かな身長差と性別、それと性格。
しっかり者の弟シェイルと、どこか抜けてる姉シェイラ。
外見はそっくりなのだが、二人の性格は全く正反対だった。
「シェイラ、起きて!」
「……」
一応起き上がってはいるが、ぼーっとしたまま動く気配がない。
全く反応を示さない姉に、シェイルはガックリと肩を落とすと、目の前に手を差し出した。
「ほらっ、行こう」
「…うん」
小さくて、暖かな手が重なる。
その手をしっかり繋いで。
二人は居間へ向かった。
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