一章 双子

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 人里から少し離れた、迷いの森。  名の通り、複雑な構造の森なので、人々は滅多に近寄らない。  そんな静かな森が、十五年程前から賑やかな声が響くようになった。 「シェイラ、朝ご飯が出来たよ!いい加減起きて!」 「…ん、おはようシェイル」  家と呼ぶには、余りにも小さな小屋の中。  おたまを持った少年が、今日も元気よく姉を起こす。  眠たそうに目を擦って起きたシェイラに、シェイルは大きなため息をついた。 「ほら、シャンとして。シェイラを見てると、何だか自分がぼーっとしてるみたいで嫌なんだ」  同じ顔に同じ瞳。  双子の中でも、似すぎた二人。  強いて違いを挙げるなら、ほんの僅かな身長差と性別、それと性格。  しっかり者の弟シェイルと、どこか抜けてる姉シェイラ。  外見はそっくりなのだが、二人の性格は全く正反対だった。 「シェイラ、起きて!」 「……」  一応起き上がってはいるが、ぼーっとしたまま動く気配がない。  全く反応を示さない姉に、シェイルはガックリと肩を落とすと、目の前に手を差し出した。 「ほらっ、行こう」 「…うん」  小さくて、暖かな手が重なる。   その手をしっかり繋いで。  二人は居間へ向かった。
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