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目を擦りながら階段を下りキッチンに入るとエプロン姿の美菜が居る。
俺の存在に気付いてるが気付いてないフリか、本当に気付いてないだけか、恐らく前者であろう。
「ちょっと、お嬢さん?」
返答が無い。無視です当たった! と喜んでる訳にもいかない。この場合の美菜は頑固だ、だがそれも可愛いのだ。
「ごめんな、起こしてくれたんだよな?」
「分かってるなら手伝ってよ。料理はあんたの方が得意なんだから」
俺に黒光りする包丁の先を向けながら答えた。――というのは俺の実家が飲食店で、小さい頃から嫌でも親父に手伝わされて身に付いた、英才教育の塊だからだ。
「おっおう」
予想も出来ない返答に言葉を詰まらせてしまう。
俺が何故家事をしているのかと言うと、それはもう色々あるんだ。
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