VOL:1 四姉妹と周也さん

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 少し時間を遡ってみる。 「暑い……」  ほんの数時間前は大雨だったというのに、空は快晴とは程遠いが雲と雲の隙間から顔を出す太陽の光は、干からびてしまうぐらいに鋭く堪らず声を漏らしてしまう。  田舎と都心の違いか? まだ春だというのに。まっ今日は特別か。  こんな筈ではなかった、仮にも上京というものだけは。だがこんなもんだ、勢いだけで東京に来てしまった事を、本当に軽率だったと思う。  ――数分歩けば、悠然と聳(そび)えるビルの陰で、倒れ込むように壁にもたれ掛かり、俺は睡魔に襲われたらしい。 「槻川啓(つきかわけい)くーん!」  その声に俺は瞼(まぶた)を開ける。人間自分の名前呼ばれれば、寝ていようがリアクションするものだ。しかし、これは可笑しい、瞳の先に美女って……夢に違いないと俺はまた瞼を閉じる。 「なっ、何でまた寝るのよっ!」 「はっはいー!? 夢じゃ……ない」  俺の両頬を軽く抓(つね)り、強制的に瞼を開かせる状況を作り出す。  瞳に広がるのは、外とは対照的で、静かかつ落ち着いた雰囲気の、どこかの一室に違いない。
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