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「啓君、あなた倒れてたのよ?」
先程とは一変し不服そうに腕を組む彼女の言葉に、必然的に様々な疑問が脳内を巡る。
言うべきか? 言うべきか? と優柔不断の最中、取り敢えず雰囲気的に謝ろうと、薄生地の布団を押しのけ、腰を上げるが、いつも以上に体が重たく感じるのは気のせいだろうか。
「何か、申し訳ないです」
「別に良いわ、私も勝手にバッグ、覗いちゃったし。それより私に聞きたい事とかないの?」
俺が横たわるベッドの縁にゆっくりと腰を下ろしながら彼女は言う。
しかし、バッグまで覗かれるとは思いもしなかった、だから名前を。いや勘違いするなよ? バッグの内側とかに名前とか書かないからな。財布! 免許証!
「はっはい! まず、此処は? 俺は確かに外に居たはずですが……」
――何故ならば、俺は外に居たはずだからだ!
「そうね、此処は……私達の家よ」
私達の家、という意味深な言葉に、一瞬新たな疑問を浮かべるが、まぁーいっか! と、それは置いといて、未だに俺は多少なりと緊張オーラを放出している。
「……家、では何故俺を、その、あなたの家に?」
「見たところ、今日東京に来たようね」
そうだ、俺は家族との距離を置くために勢いだけで、上京した。まぁ具体的理由は追々って事で。
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