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講義が終わると
「次、私あっちなんだ」
と彼女はじゃあね、と笑顔で坂崎と、一応俺にも会釈して
去っていった。
「・・・今のが『みのりちゃん』?」
坂崎は、
「いや、今のはアサコちゃん」
とあっさり否定した。
「ってか、お前なんでみのりのこと知ってんの?」
「いや、知らなかったよ。
…みのりちゃんも、アサコちゃんも」
俺は、怒鳴りたいのを押さえて低く言った。
まったく、こいつは。
「・・・・」
「二股かよ。
お前、そんなんばっかしてると、
そのうち刺されて死ぬぞ」
「まあまあ」
坂崎は、ははは、と笑って受け流した。
そんなこと、大したことねーよ。
と言って。
坂崎は、誰とも真剣には付き合わない。
浅く、広くという感じだ。
来るもの拒まず、去るもの追わず
という表現がぴったりだった。
だからかな、
あいつがいつも、さみしそうなのは。
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