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3年になって、本格的にゼミが始まった。
俺も坂崎も、「課題の多い大変」なゼミを選んだので、
忙しくて、なかなか顔を合わすこともなかった。
ゆっくり話す機会もあまりない。
ゼミが始まると、どうしてもゼミ中心の生活になってしまう。
楽なとこなら違うんだけど、
あいにく毎日毎日、課題に追われる日々が続いた。
でも、俺には坂崎のことを考えずにすむから、
それはそれでありがたかった。
そうしているうちに5月の半ばに差し掛かっていた。
初夏の日差しは案外きつくて、
夏の苦手な俺はすでに夏バテ状態だった。
昼間、食堂で飯を食ってると
後ろからポン、と頭を叩かれた。
坂崎のクセだ。
「よお、生きてっか?」
坂崎は俺の隣に座ると
大盛りカレーを一口すくって口に入れた。
「おかげさまで、なんとかね。
坂崎は?」
「こっちもお前んとこと似たような状況よ。
…毎日、死にそう。
土日も無いしな」
「俺んとこも休日出勤だよ」
はあ~、と同時にため息をついて、
顔見合わせて笑った。
「お前、バイトとか行ってんの?」
「まあね、何とか時間見つけて行ってるよ」
食べ終わった俺が煙草に火をつけると
坂崎も俺の煙草を一本取り出したので
ライターを手渡した。
久しぶりに触れた手は、
少し冷たかった。
「こんな生活も慣れれば・・・・」
「いや、慣れないだろ。
ってか、慣れたくねーよ」
「でもお前エライのな。
俺、バイトなんてぜってームリ」
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