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俺、あいつのこと、ずっと好きだったんかな。 結子と別れたって聞いた時も ショック受けてるあいつには悪いと思ったけど、 なんとなくホッっとしたし、 大学入ってからも、 あいつは女と俺がかぶったら、 俺を優先してくれてた。 確かに「友情には厚い男」だよ。 俺はそれが嬉しかったし、 煙草の銘柄も同じの吸うようになったのも 偶然じゃない。 メンソは嫌いだったけど、 あいつと同じだ、と思ったら なんとなく同じやつ買ってた。 共有するものが、ひとつでも増えれば、 嬉しかったから。 …やっぱ、ずっと好きだったんか。 考えないように、 考えないようにしてたけど、 それも飽きた。 ていうか、もう限界。 「やっぱ、好きだったんじゃん」 って、 自分に言ってやりたかった。 でも、あいつは俺の友達だし、 あいつにとっても、俺は友達だし。 …「好きだったんじゃん」 って気付いても、 どうしようもねえよ。 どうすることもできない。 開いた手のひらを ぐっと、握った。 最近、こればっかやってる。 何もつかめないのを、 確認するかのように。
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