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6月に入ると、梅雨のせいか、 雨ばかり続いた。 と言っても俺はゼミで研究室にひきこもりだったから あんまり関係ない。 最近は、朝、夜と関係なくて 講義が減った分、 ゼミ三昧だった。 俺と坂崎のゼミ室は 建物が違って、 顔を合わせることもあまりなかった。 望んだこととは言え、 さみしいというか 切ない気持ちは増す一方だった。 「時間があれば」 なんて思ってたけど、 逆じゃねーか。 時間がたつほど、 会えない時間がたつほど、 自分を見失いそうだった。 「…今日も雨か…」 廊下にある喫煙所で、 窓の外をぼんやり眺めながら 一人ごちた。 その時 「なにたそがれてんだよ?」 と後ろからポンと叩かれた。
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