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それから数日して、 本当に坂崎から電話がかかってきた。 時間は深夜の1時をちょっと過ぎた頃で ちょうど、大学を出るところだった。 「どしたん、こんな時間に」 「いや、矢倉ゼミの奴らがまだ残ってるみたいだったから お前もまだいるかな、と思って」 「うん、ちょうど帰るとこだけど」 「そりゃちょーどいいや。 俺も今から帰るとこなんだわ。 久しぶりに飲もうぜ」 思いがけない坂崎の誘いに俺は 「お、いいねいいね」 と有頂天になって答えた。 俺達はコンビニでビールやらつまみを買い込んで、 坂崎のアパートへ向かった。 彼のアパートなんて、どれくらいぶりだろう。 いつも、ドキドキしてた。 でもそのドキドキは見ないふりしてた。 今夜は、もうふりはしない。 ドキドキしたって、いいだろ。   少し広めの1DKで 俺達は日ごろの鬱憤を晴らすかのように よく飲み よく語った。 どうせ明日も夜から出勤だ。 ちょっとくらい、飲んだっていいだろう。 坂崎も、いろいろと大変らしいようだった。 そして「こんなんであと最短4年もやっていけんのか」 という見解に達した俺達は 顔を見合わせて、 ため息をついた。
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