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「別に、女となんていつでも行けるだろ」
坂崎はサラッと返した。
「いや、俺とでもいつでも行けるだろ?」
「いいんだよ。
最近、お前と飯食ってなかったし。
お前、バイトばっかで忙しいもんな」
「…ごめん」
俺が謝ると
「さ、5千円分食おうぜ。
5千円超えたらおごってやるよ」
坂崎は笑って、店に入って行った。
坂崎は「生2杯」と店員の女の子に頼むと
煙草に火をつけた。
「今年からゼミも始まるし、
忙しくなるなー」
坂崎がおもむろに言った。
「バイト三昧もこれまでだな」
「お前、バイトやめるん?」
「いや、週1くらいでは行くよ」
運ばれてきた生ジョッキを手渡しながら答えた。
俺は奨学生だったが生活費は自分で稼がねばならず
バイトに明け暮れる日々だった。
「坂崎は堀井ゼミだっけ?」
「そうそ。
あそこもキビシイからな~」
「でも、上行くんだろ?
それなら、まあしょうがないよ」
俺達はコツン、とジョッキを重ねて乾杯した。
一口飲むと、坂崎は
「ナオも矢倉先生んとこだもんな、
バイトなんてやってらんなくなるな」
「そうなんだよ。はー、今からユウウツ」
俺はため息をついて言った。
坂崎も俺も、学科の中では大変をされるゼミに入ることになっていて、
これからはバイトどころではない生活が予想された。
坂崎はマスターまで進みたいらしく、
去年からいろいろ調べているようだった。
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