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「やっぱ、好きなんじゃん」 自分で言ってみて、 ユウウツになった。 でも、やっと、口にだして言えるようになった気がする。 気付かないふりを、 もう何年続けてきたんだろう。 自分の気持ちに素直になれたなんて、 少しオトナになれた証拠かな。 アパートに着くと、俺は電気をつけて、 ゴロっとベッドに倒れこんだ。 仰向けになって、ぐっと腕を伸ばした。 そして、ぱっと手を開いてみる。 少し、酔ったのかな。 大して飲んでないけど。 酒、弱くなったんかな。 でも、どんなに酔ったって、 あいつの前では失態は見せない自信はある。 今までどおりで、いられるさ。 …今までどおり、友達で、 いられるさ。 友達で。 そうでなきゃ、いけないもんな。 そうするしか、ないもんな。 俺には、選択肢なんて、 ないんだから。 開いた手を、ぎゅっと握りしめた。 何も、つかむものもないのに。
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