さて、逃げましょう

2/3
前へ
/23ページ
次へ
一番思い出したくないのは、あの町と日々だけ。 すがり付かれた、育て親。 逃げて、今すぐに 町から逃げなさい。 どうして? お前には、人としてまだ生きられるからよ 私が産まれたのは、小さな湊町。 そして、世界に売られた。 誰が憎いとか、殺したいとか。 幸せになりたいとか。 そんなの考える前に、産まれたときから、もう、世界の物。 そして、世界から消されて、この世には存在しないとされていた。 町には煙突があったの。 とても、とても高い煙突だって覚えてる。 煙突からはね。 定期的に放射されていた細かい煙と光。 育ての親は、私を家の奥に置いて行って、煙突から出る煙と光を受ける為に道に出て行く。 でも、でも。 窓越しに見るだけなら、綺麗なの。 物凄く。多分、幻想的とか言うのは、ああいうのを指すと思う。 そして、怖いの。 家に戻ると、親は、顔が、身体が真っ赤。目も。 息がすごく荒い。 ここはね、 もう、世界から消されているの。 私が生活が一人でできるようになると、親は触らなくなったし、触らせてくれなくなった。 あと、奥から出られなくなった。 親に嫌われているって、思った。 わたしと親は、違ってたし。 親は、真っ黒で。私は、白だったし。 湊町の人たちも同じだったから。 違うわたしを見せたくないだって思った。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加