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俺は、死のうとした。
確かに、空に一歩を踏み出したはずなのに。
なの、に。
ちゃんと意識があるのは、なぜ?
俺が俺に聞いてもおかしいってのは、分かる。
うん、頭がイカれて幻とか夢とかの類いじゃない。
今の今まで、マンションの屋上から飛び降りて風を切るって感覚。空気抵抗とか、よく覚えてるし、心臓もバクバク。
死ぬって、感覚も。
人――他人にはわからないな、絶対。
で、鳥みたいに。
町並みが、さっきよりも高い所から見るみたいに小さく小さく、見えるのは。
現実――なの、か?
「落ちゃったの」
声の方向を見ると、俺の真横。
で、スッゲー可愛い女……。
「なあ、名前は?」
あと、可愛い顔越しに見えてる。
バサバサって動いて、羽毛が飛んでる。
「背中に生えてるの、自前デスカ?」
「ない。自前だよ」
にっこりって笑う女――自殺を止められた俺。
助けたのは、ストライクでそのままヤリたいって思える女。
いや、だって。
可愛いし、胸とかスタイルも。
でも、女は、世界の敵だと五分か十分後に知りました。
更に世界は、とても残酷だ。
彼女は、
だから。
「桜、さくらって花の名前。で、お前は種」
だって変だ。世界に売られたって。間違いとか、解んないけど。
変だって、俺は思った。
「………俺にも、ちょうだい。半分でも良い」
「さく、ら」
「そうすれば、生きられるし。逃げられる」
触れてしまえば感染するの、か?
「俺は世界を捨てたい。種は、世界から逃げたい――掴まりたくなくて逃げて、一緒に」
多分、助けられないと思った。
誰も助けてくれない。
だって、今の医学には、もうないとされている。
世界は、発展の為と安全の為に。
同胞を、逝かせた。
残酷すぎるよ、こんなの。
俺から見れば、まだまだって感じの子。
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