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「君はどう思う?」
「分かりません」
「俺もパンケーと腫瘤形成性膵炎の鑑別診断(ルールアウト)つかないんだ。
放射線科の先生に読影してもらおう。
MRI・MRCPと、ERCPもやるべきだな」
呼び出し(コール)で、放射線科医蓮川恭介が診察室に来た。
細面で神経質そうな中年のその放射線科医は食い入るようにCTを読影した。
「造影早期には造影剤が染まり抜け、造影後期には尾側(びそく)より濃染してる。
主膵管(しゅすいかん)は軽度拡張か」
流石、秀才放射線科医だ。俺にはそこまでは読めないと感心した。
「ルールアウトは付いたか?」
「いいや、これはCTだけじゃ分らんな。嚢胞(システィク)(水ぶくれ)で無いことは確かだが」
蓮川の取り計らいで即日行われた造影・単純MRI、MRCPでもはっきりとはしなかった。
「議論したんですが、膵臓癌かシコリを作る膵炎か判断しかねますので、検査入院しましょう。
もし、癌ならバイポーマとか特殊な例外以外癌の中でもえらい性質(たち)が悪いんでね、今日入院でいいですか?」
「はい」
「じゃ、明日ERCPと言う特殊な検査するんで、今日から絶食でお願いします」
あまり重くない、でも適切で簡潔な病状説明(ムンテラ)だった。
その他五人診て、病棟回診を終えた出水と津田は第一内科午後(イブニング)症例検討会(カンファレンス)の準備もせず研究室に向かう。
そう、出水専用の症例検討(カンファレンス)室(ルーム)は出水の研究室なのだ。
そして、蓮川は共同研究者であり、臨床でのコンビである。
俺は研究室に入る。
シャウカステンが壁にあり、理科室の机みたいな無機質な黒い机にマイクロピペット、薬品、光学顕微鏡、プレパラート等が置いてある。
実験動物飼育室とプレートのあるドアや、実験動物剖検・手術室とのドアまである
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