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(……他には)
あるのは金目のものばかりだ。
あいにくと他人様の金に手を出すような人間に育てられた覚えはないのでそろそろお暇させて貰おう。
そう思い金庫の扉を閉めた瞬間、背後でドアを開く音が聞こえた。
丸々と太ったこの屋敷の主が現れた。
予想外の事態に混乱し、お互いに見つめ合う。
限界を感じた影がその口を開いた。
「……こんばんは」
バックを掴み、すぐさま窓に向かって走り出す。
腕で頭を守りながら全速力で二階の窓から飛んだのは人生初の体験だった。
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