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蒸し暑い夜を耐え抜き、心地よい眠りからほんの少しだけ浮き上がって寝ぼけ眼の俺の前に、ふわりと何かが舞った。
それは美しく、持ち主の腰あたりまである茶髪のポニーテールだった。
その髪の持ち主は、なんの躊躇もなく窓際のベッドで寝ている俺の元へと近寄ってきて、揺り起こしてきた。
……もの凄く強く。
髪の持ち主を凝視すると小さい頃からほぼ毎日見続けていた幼馴染みの顔にそっくりで――
まるでミルクのように白く、綺麗な肌。神様が顔の黄金律を当てはめたとしか思えない美しい顔に、髪と同じ色の目と高い鼻、笑顔の似合う唇をセットしていた。
着物を着させ、美女コンテストか何かに出してしまえば優勝確定と言う程の美少女は、学園の夏服に身を包み、寝ぼけている俺に何かを必死に伝えようとしている。
「豊くんってば! 今日から学校だよ!? ボクまで遅刻しちゃうから早くおきてよーっ!」
……本日は九月一日。
九月一日と言えば始業式。
基本的に何処の学校でも同じだろう。勿論俺と目の前の少女が通っている私立高瀬学園であっても。
遅刻しかけ、と言う言葉を聞いて一気に眠りの国から復活した俺は、目の前の少女に問いかける。
「マジですか?」
「マジだよ! ホラホラ! ボクが豊くんの制服だしている間に時計を見てごらんよっ」
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