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俺は少し前を早歩きで行く制服の少女に声を掛ける。かれこれ三度目。またも反応がない……かと思いきや……
「私をぉ……置いて行ったぁ……」
耳を澄まして、やっと届く程の声だった。だが、良い傾向だと思ったので相手の出方を待った。
予想外に輝欄は立ち止まり、そして振り返る。
その顔は俺への非難と、怒りをあらわにしていた。しかし、それは全く恐くなく、むしろ愛嬌すらある。
もともと輝欄は柔和な瞳に引き締まった唇をしている。今は目が潤み、眉根が下がっているが、見方によっては困っているようにもとれる。
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