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いくつかの季節が過ぎたが、彼のことは時々思い出す。
優しい笑顔と
悲しい望み
あの子は今、笑っているだろうか・・・
そんなことを考えている私の後ろから懐かしい声が、あの優しい声が聞こえた。
「・・・・良かった。まだここにいてくれた。」
振り向くと、そこには成長したあの子が優しい笑顔と共に立っていた。
「久しぶり・・・用事で近くに来たから寄ってみたんだ。」
ああ、この子は私のことを覚えていてくれたのか。
「・・・・変な別れ方をしたから気になってね」
すまなそうな顔をするこの子を見て、私はこの子の笑顔が見たい。この子の優しい声を聞きたい。この子と共にいたい。そんな感情が溢れてきた。
「・・・あの頃は、他者にあたることしか出来なかったけど、今ならあなたの優しさがわかる気がするんです。」
ああ、きっと
「元気そうで良かった。」
優しい誰かに会えたんだね。
そんな顔が出来る程の・・・・・
ふわり
私は彼に抱き付いた。
彼は最初は驚いた顔をしたが、すぐに優しい笑顔になって私を抱き締めてくれた。
私「私はキミのそばに居ても良いか?」
「はい。」
彼はそう言って微笑んでくれた。
「それじゃあ・・・・・・あなたの名前を教えてくれますか?」
私「私は――――――。」
完。
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