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「天地を繋ぐ空の塔を目指すべく、欠片達の物語は続く……」
南国ヒューデン、首都クリアル・ラグナ、ラオル城『黄泉の間』
誰も居ない深夜の部屋で一人、天使サージェスは呟いた。
緑色に美しく輝く彼女の瞳は少し上を見て、両方の手を組んで祈りの形をとる。
すると、その体から黄緑色の光がかすかに発光を始めた。
「どうか彼等の行く道に幸福があらんことを……」
彼女がそう呟いた瞬間、目をカッと開くと、そこから黄緑色の光が瞳に宿り、天使サージェスの透視が始まった。
そして静かに語り出す。
「一つの欠片、クレイドをリンディレスカに残し、一人先を急ぐもう一つの欠片ソティア。ソティアは陸軍大佐ノムドル・ハイヤと共に陸艦へと乗り込み、次の街へと向かうため闇の中を駆け抜けている。
一方、眠り続けるクレイドには彼の義姉であるコア・アスレッドが付き添い、彼のまだ遠い目覚めを今か今かと待ちわびている……」
緑色の瞳の中に映し出される光景を眺め終え、天使サージェスはフゥッと息を吐き、体から放出されていた光も消えてなくなった。
「二つの欠片は離れていても繋がっている。切っても切れぬ運命。のちにまた二人は出会う。心配せずとも」
目を閉じて少し休憩し、サージェスは植物に身を預け、中へと引き込まれていった。
ズズズ……という音を立てながら天井から伸びている長い蔓のような植物達が勝手に彼女の体へと絡まっていく。
彼女は再び眠りに就いた。
「目覚めなさいクレイド……あなたが再びその瞳を開けた時、物語がまた大きく動き出す」
──目覚めるのです──
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