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「クレイドッ」
目を開ければ……腕の中?
温かい……誰かに……抱きつかれてる?
まだ混乱している頭を必死に動かしてクレイドは整理しようとする。
「良かった……本当に良かった。もう、心配したんだから」
そう言って、その女性はやっと自分から離れ、その涙ぐんだ瞳を静かにぬぐった。
「えっ……ソティア?」
驚いた。
その女性はソティアだっ……いや、よく見てみると髪の色が違う。
ソティアは黒髪だが、この人は白……ということは。
「あれ?もう寝ぼけてるの?ほら……こうしたら分かるでしょ」
そう言って、その女性は自分の髪を後ろにまとめて見せた。
そう、ソティアの双子の姉であり、クレイドの義理の姉でもあるコア・アスレッドだった。
「コアさん……髪ほどいてたから分からなかった」
弱々しく笑うクレイドにコアはやさしく微笑みかける。
髪形も違うし、いつも軍服を着ていたから普段着なんかは見慣れないのだ。
「4年も一緒に住んでおいて分からないとは何事よ……とにかく、本当に心配したんだからね。もう意識は取り戻さないかもしれないって医者にも言われて」
「そうなんですか……すいません」
グッと体に力を入れて起き上がってみる。
体の節々は少々、痛むが動けないことはない。
ここは……リンディレスカの防衛庁の中のようだ。
見覚えがある。
確か姫とアルフさんが倒れてた時に眠っていた場所で、部屋の隅には見たことのある看護士の女性が座っていた。
「とにかく良かった。今、他の人達も呼んでくるから、そこで待っててね。一人で立ち上がろうなんて思っちゃダメよ」
そう言いながらコアは慌しく部屋の外へと出ていく。
戻って来たのか……。
まだイマイチ混乱している自分の頭をさすりながらクレイドは思う。
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