第21章~師の定義~

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このまま倒れていても殺されるだけだ。 グッと力を入れて立ち上がるも、それがやっとで動くことができない。 やばい……このままじゃ……動けっ。 「……そろそろ時間だな……」 クレイドはフゥッと息を吐き、右手にフィルを集中させる。 すると手の平からブワッと炎が放出され腕全体が包まれる。 ──殺る気だ── 「ちくしょっ……」 声を振り絞っても体が重くて動かない。 ついにクレイドはビーに向かって突進し始めた。 ダメだ……終わりか……。 そう思われた、その時っ。 「はーい。おいたは、そこまでー」 急にクレイドとビーの間にヴィーナが現れたではないか。 「っ!!」 クレイドはいくらか反応したが、そのままヴィーナごと炎をぶつけようとする。 しかし、その炎に包まれた右手をガッと掴み、流れに任せてヴィーナはグイッと引っ張る。 「なっ」 クレイドはそのまま宙に浮く形となり、ヴィーナはそれを地面に押し付け仰向けにさせて、その額にトンッと人差し指と中指を置いた。 その瞬間、クレイドはビクッと反応して動かなくなる。 だんだん目が霞んできて……白いモヤが立ちこめたかと思ったら……再び霧が晴れてきて……。 「……っ」 クレイドは目を覚ました。 「元に戻ったようね」 ヴィーナはクレイドの上からどき、スッと立ち上がった。 ビーは助かった、とばかりにその場に座り込んでしまう。 何が起こったんだ……。 クレイドは状況を把握するために体を起こし、ヴィーナを見る。 見知らぬ女性が一人、自分の前に立っている。 一体、何があったのか……とりあえず聞いてみなければ。 「あの……あなたは一体ぃいっ!?」 すると急にヴィーナがクレイドの顔をガッと掴み、マジマジと見始めた。 クレイドは抵抗する間もなく、彼女に頭を押さえられ動けなくなる。 「あの……」 何がなんだか分からない。 必死に押さえ付けられている顔の筋肉を動かしてクレイドは呟く。 するとヴィーナは突然ニコーッと笑った。 「やっぱり合格ー」 「はい?」 何のことだかさっぱりだ。
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