第22章~沈黙の賢者~

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「それじゃ改めて自己紹介ということで、南国ヒューデン空軍中佐代理ことヴィーナ・ヴァレンス。炎の真恵者でもあります。よろしく」 ほんわかと自己紹介を終え、ニコニコと笑みを浮かべるヴィーナ。 他のメンバーは多少、その空気に戸惑っているようだった。 ……先程の出来事から数十分後。 ビーはクレイドの暴走のため重傷を負ってしまい医務室に運ばれていき、その他は防衛庁の中に戻って一息ついているところだった。 「ご挨拶、遅れまして申し訳ありません。南国ヒューデン空軍少佐コア・アスレッドであります」 ビシッと敬礼をしてコアも自己紹介をする。 初めて見たにしても驚きだっただろう……自分の上司がこんなにも若い女性だったなんて。 ……にしても結果を見てみると彼女が来なければビーは命も落としかねない状況だったことは確かだ。 それに、そこまでビーを追い詰めたクレイドをやすやすと取り押さえることができたのを見てみても相当の実力の持ち主であることは間違いない。 ヴィーナは付き人のシェルに渡していた帽子を受け取り再びかぶり直すと、皆の顔を見て口を開く。 「そこに居るセド・ガドリック長官の命により私があなた達を飛空艦にてセイデルまで送り届けることになりました。クレイドくん、君を弟子に貰うという条件でね」 クレイドを指差しウインクをしてヴィーナは答える。 クレイドは何?と反応して後ろのセドを見た。 そんなことは全く聞いていない……いつの間にそんな事態に陥っていたんだ? するとセドはクレイドの方を見て説明し始めた。 「勝手に決めてしまったことは謝る。しかしなクレイド、彼女はこの国で唯一ソティア以外でお前と同じ炎を操る真恵者だ。お前はまだ自分の力の全てを発揮できてはいない。今はそれを解放する良いチャンスだと思ったのだ」 確かにまだ自分は女神の力を完璧に使いこなせていない。 というかコントロールができず暴走してしまったり、自分から使ってみようとしてみても何も起きやしない。 ……だからって少し急すぎやしないだろうか。
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