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弟子入りなんてコアに銃の扱い方を習ったくらいで経験がないのだ。
「クレイド、スウィイルの強化には最適な方法なのかもしれない。同じスウィイルの持ち主の元で習うことができるなんて、そうあることじゃない」
コアも後押しをする。
最早、選択肢はない様子である。
「……はい。よろしくお願いします」
仕方ない、とクレイドは弟子入りをすることを決定した。
ヴィーナはさらに、にんまりとしてシェルの鞄の中からササッと紙とペンを取り出した。
「それじゃあ、この書類にサインしてもらえるかな?誓約は大事ですからね」
「ヴィーナ、こんな場所ですることはなかろう」
苦い顔をしてセドがたしなめる。
しかし、ヴィーナはどこ吹く風で笑顔のまま返事をする。
「あら、久し振りに良い人材を紹介してくださったんですもの。後になって破棄なんてことになっては困りますからねぇ」
フフフッと笑うヴィーナの前でクレイドは誓約書に自分の名前を記入する。
誓約書には、こう書かれていた。
『弟子入り希望者誓約書』
1.弟子はいかなる時も師に対し忠実であるものとする
1.弟子は師を尊敬し……
1.弟子は師に対し……
弟子は師に対し、弟子は師に対し……が続く明らかに自分で作ったであろう、うさんくさい誓約書だった。
しかし、コアとセドの二人もああ言っていることだし、とクレイドはサインをしてヴィーナにそれを渡した。
ヴィーナは受け取って名前を確認する。
「はーい。これで今日からクレイドくんは私、ヴィーナ・ヴァレンスの弟子となりましたー。よろしくねー」
「あ、こちらこそ」
一応、気を付けをしてクレイドが言う。
しかし、ここでセドが割り込んでくる。
「だがな、彼はこれからすべきことが山ほどある。故にクレイドと師弟関係であるのはセイデルの首都ネーテルフィスを出ていくまでのものとする」
衝撃の一言?少なくとも彼女にとってはそのようである。
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