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「なっ……これ……」
「透けてるでしょ」
驚いた。
自分の体は半透明になっていて、後ろの壁が見えてしまうほどにスケていたのだ。
「ソティア……これはどういう……」
「今のあなたは本体から意識だけが飛び出して一つの集合体として存在している。つまりは幽体離脱ね」
「幽体離脱って……」
透明で地面が見える自分の手を眺めながらクレイドは一人、呟く。
まさか意識を取り戻していきなり、こんな状態になろうとは。
「でも、なんで俺はこんなことになってるんだ?普通じゃあり得ないだろ?こんなこと……」
そりゃそうだ。
通常の生活をしていて幽体離脱をするなんて……一部の特殊なケースを除けばあり得ないことだろう。
まぁ……自分もその特殊なケースに当てはまるべき人間なのだけれど。
「それは今、あなたが耳に付けているピアスのせい」
「ピアス……いつの間に」
耳を触ってみると確かに左耳にピアスが付けられていた。
それはソティアの右耳にも同じピアスが付けられていて、何か赤くてきれいな宝石で作られているようだった。
「これは火の女神の結晶で作られたピアス。これを付けることにより、お互いに繋がっている私達の繋がりをさらに増すことができ、このような感じで会話をすることも可能になるの」
リンディレスカを出発する前に気絶している自分に付けたということか。
それでなんとか納得がいった。
「ところで……ここはどこなんだ?」
そう言えば……と、クレイドは辺りを見回す。
驚くことだらけで、ここがどこであるのか気にもならなかったのだ。
どうやら部屋の中のようだが、窓から見える風景は見慣れない木造の建物が並ぶ、民族的な村の様子だった。
もう別の国に渡ってしまったのだろうか。
「ここはグレアノルム……私の生まれ故郷」
「グレアノルムッ」
それを聞いて再び驚いた。
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