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†‥‥‥‥‥‥†
「ス………、……ザン、スーザン」
その声とともにいきなり頭を揺すぶられ、私は慌てて目を開けた。
「気がつきましたか。
よかった……」
寝ている私の頭を掴んで揺すぶっていたのは、やっぱりというかなんというかトーマスだった。
「ん……」
まだ揺れてる感じがする頭をおさえながら、ちょっと起き上がってみる。
病院の個室のベッドに寝かされていたらしい。
窓の外では、細い三日月が輝いている。
肩と太ももの傷口をソロソロと触ってみると、包帯が丁寧に巻いてあった。
「馬鹿野郎、お前の彼女だろうが。身体いたわれ」
そしてそのトーマスの頭をぶっ叩いた白衣の人は……
「誰?」
「スーザン、こちらは俺の知り合いのユージーン・スタイン医師です。
ユージーン、スーザンは俺の彼女じゃありませんってば」
その言葉を聞いてまた見ると、その人はにっこり笑って私を見た。
黒髪の……、歳は30歳くらい?
笑顔が爽やかなお兄さんだ。
「呼び方はユージーンで良いから。
ってかスーザンも運が悪いねぇ。トーマスと会っちまうなんてさ。
ま、入院費とかはトーマスに払わせるし、別に傷のことをとやかく聞いたり調べたりはしねぇから。
二人で仲良くやってくれ。
ぁ、トーマスは後で俺んとこ来い」
じゃあな、と軽く手を振りながら、ユージーンさんは部屋を出ていってしまった。
困ったことに、部屋には私とトーマスの二人きり。
……気まずい。
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