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時は幕末―――――
場所は―――――――――
島原、『桜丸屋』
まだ一日が始まったばかりの今、外を歩く者は少なかった。
そんな島原の街を駆け抜ける少女が一人―――――。
ダダダダダダダダダダッ
カツカツカツカツカツ
「待ちなはれぇぇぇぇぇ!」
「嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
綺麗な着物をホコリまみれにして逃げている少女。少女は狭い路地に逃げ込みながら追っ手を巻いている。
「お稔!いい加減におし!」
少女の名前はお稔。桜丸屋で働く遊女。
「もう嫌なんだよぉぉ!」
そう叫びながらお稔は街に溶け込んでいった。
「全く……。用心棒に探させるしかないわぁ…」
主人は軽く溜め息をついて諦めたように店へ戻って行った。
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