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お稔は路地から大通りを覗いた。
「やっと諦めたか……」
そう呟き疲れたのか腰を下ろした。早朝であれ路地は暗い。
「ちくしょー……何で俺が遊廓なんぞで働かないといけないんだ!俺は男なんだぞ!?」
そう一人叫び、お稔は路地の壁を蹴った。
もうお気付きだろう、お稔は少女ではなく少年、つまり男だった。だが顔立ちは十分女と言えるものだった。
髪は短髪、しかし顔は女顔で着物も女物だ。
何でお稔が遊女として遊廓で働いているかは語ると長い。
「俺は武士になりたかったんだ……腰に刀を差したかったんだ!」
そこから小一時間お稔の一人愚痴は続く。その上叫び疲れて夕方まで寝てしまったのだった。
その後路地から這い出て急いで店へ戻ったのは言うまでもない。
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