たばこ姫

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娘の部屋の扉をノックすると、中から「入っていいよ。」と返事があった。 その声を聞いて、少し安堵する。 扉を開けると沢山のぬいぐるみ達に出迎えられた。 娘が小学生の時から集めていたものである。 今は控え目にしてるそうだ。 「熱、あるのか?」 「微熱程度だよ。 でもちょっと頭痛いかな…。」 娘の頭には氷嚢が据えられていた。 傍にはスポーツドリンクと体温計があり、万全の体制だ。 「駅伝、大丈夫なのか? 今回は無理しなくていいから休んだ方がいいぞ。」 娘はそれを聞いておれを睨みつけた。 「休むなんて絶対無理。 わたしはこのために毎日練習してきたんだから!」 「おれだって葵に活躍してほしいさ。 けど、おれはお前の身体のことを思って言ってるんだ。」 「わたしじゃなくて、自分の身体の心配をしてよ!」 おれはその言葉に何も言い返せなかった。 「……約束して。」 その約束は、おれにとってとてつもなく大きなものだった。 「わたしが区間賞取ったら、お父さんはたばこを辞めること。」
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