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おれは会社から帰って、自分の部屋に向かった。
リビングのテレビには夕方のニュースが映っている。
中学二年生になる娘が、部活から帰ったままの格好で画面に集中していた。
おれは携帯電話会社に勤めているため、客の前に出ることが多い。
そのため、毎日帰っては「朝倉真司(あさくら しんじ)」と書かれた名札を取り外す。
ここ、朝倉家は二十階建てマンションの一番上にある。
そのため、ベランダから見える夜景は最高にたばことの相性がいい。
おれはスーツから部屋着に着替え、たばこの箱に手を伸ばす。
「お父さん、晩御飯だってよ。」
不意に娘の声が扉越しに聞こえたので、慌ててたばことライターを机の引き出しに投げ入れた。
「葵(あおい)。 今日の晩御飯お母さん何て言ってた?」
娘に悟られないよう、おれは晩御飯の話題を出す。
「お父さんの好きなニンニクギョーザだって言ってたよ。」
「わかった。 すぐ行くよ。」
娘が扉の前に立ったまま様子を伺う気配があったので、おれは諦めて食卓に向かう事にした。
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