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「簡単よ。 あたしとサヨナラすればいいの。」
おれは視線を天井から煙に戻す。
「どうやったらお前とサヨナラできるんだ? 今まで生きてきた中で、どの友人よりも、妻よりも、誰よりもお前との付き合いが一番長いんだぜ…?」
ケムは何か考えるような仕草をして、冷静に言った。
「確かに、あたしは真司に長く大切にされてきた。 でもそろそろあたしとは縁を切るべきね。 現に、あなたの肺は真っ黒ってレベルじゃないわよ?」
「…そういう問題じゃねぇ。」
おれはたばこを灰皿にぐいっと押し付けて、煙を手で払う。
喫煙室を出ようと立ち上がり、扉に手をかけようとした時だった。
「……大切なモノを見つけなさい。 あたしより大切なモノを………。」
おれはそれには応えず、黙って喫煙室を出た。
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