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家に着いた頃にはすっかり、インナーの中まで雨に濡れてしまっていた。透は自転車を車庫の端に入れると玄関に駆け込んだ。
「母さん!…母さん!」
呼んだか気配がない。
「また近所で喋ってるのかな。…ったく。後で玄関がびしょ濡れだの足跡付いてるだの言っても知らないからな」
そう言ったものの被害を最小限にするため、透はバスルームに駆け込むことにした。
バスルームは玄関を入ってリビングとは逆、左手奥にあった。取り敢えずカバンは玄関に置いたまま、バスルームのドアを開けようと、手を伸ばし掛けた。その時だった。カチャ、とドアが開いたのだった。
「お母さん?」
「え…」
「あ、なんだ。トオルだったの」
バスルームのドレッシングルームから顔を出したのは、一足先に帰っていた夏蓮だった。夏蓮もまた濡れて帰宅したため、バスルームに入っていたのだ。
しかし問題は、その姿にあった。髪を乾かしていたところだったのだろう。ドライヤーを手に、バスタオルを巻いただけの姿だった。
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