20人が本棚に入れています
本棚に追加
****
「どうしましょう…困ったわね…。風邪薬“粉”しかないのよ。夏蓮ちゃん“錠剤”しか飲めないし……」
「俺、買ってくるよ」
「それがダメなのよ。近くの薬局は午前中は薬剤師さんがいないからお薬買えないの。夏蓮ちゃん、大したことないって言うけど…。お父さん、お世話になってる先生と取材旅行でいないし、困ったわね…」
「だったらソレ飲ませるしかないだろ。かして」
母親の手から粉薬を取ると、ペットボトルの水をグラスに移し始めた。
「熱は何度?」
「38.6℃よ」
「わかった」
冷蔵庫からヨーグルトを取出し、器に少量取り分けた。それを手に、
「今日、俺早いから。夕方になっても熱、下がらないようだったら、病院に連れてくよ。母さんは、俺が今から姉さんに薬のませて休ませるから、後で目を覚ました時何か口に出来そうだったら、食べさせといて」
そう言うと、二階の夏蓮の部屋へと向かった。
「本当に、透は夏蓮ちゃんのお兄ちゃんみたいね」
ドアの向こうに消えた透の背を見やり、微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!