抑圧

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     **** 「どうしましょう…困ったわね…。風邪薬“粉”しかないのよ。夏蓮ちゃん“錠剤”しか飲めないし……」 「俺、買ってくるよ」 「それがダメなのよ。近くの薬局は午前中は薬剤師さんがいないからお薬買えないの。夏蓮ちゃん、大したことないって言うけど…。お父さん、お世話になってる先生と取材旅行でいないし、困ったわね…」 「だったらソレ飲ませるしかないだろ。かして」 母親の手から粉薬を取ると、ペットボトルの水をグラスに移し始めた。 「熱は何度?」 「38.6℃よ」 「わかった」 冷蔵庫からヨーグルトを取出し、器に少量取り分けた。それを手に、 「今日、俺早いから。夕方になっても熱、下がらないようだったら、病院に連れてくよ。母さんは、俺が今から姉さんに薬のませて休ませるから、後で目を覚ました時何か口に出来そうだったら、食べさせといて」 そう言うと、二階の夏蓮の部屋へと向かった。 「本当に、透は夏蓮ちゃんのお兄ちゃんみたいね」 ドアの向こうに消えた透の背を見やり、微笑んだ。
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